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眺望撮影以外での個別の撮影事例を紹介するケーススタディ |
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ドラマ「コード・ブルー」ドクターヘリ真俯瞰撮影 |
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■ファーストコンタクト
「スタッフコミュニケィションの安藤と申します。」穏やかな口調でお問い合わせの電話をいただいたのは2008年4月28日のことでした。某民放で7月から始まるドラマの番宣ポスター用に、駐機してあるヘリコプターを真上から撮影したいとのこと。
このように初めてのお問い合せでは具体的な呼称やクライアント名が伏せられてお話しをいただくことがよくあります。参考程度に知りたいというお客様もいらっしゃれば、現段階(発注前)では守秘義務があり具体的には話せないという事情の方もいらっしゃいます。制作発表前のドラマでは特に後者であろうことを想像しつつ、安藤氏のお話しをうかがいました。
(1)ヘリが完全に収まる高さを保ちつつ真俯瞰撮影が可能か?
(2)B倍サイズのポスターのため6×6以上のポジ撮影が可能か?
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(1)に関してはマンションなどの眺望撮影で似たような絵柄が続くため、カットの区切りとしてカメラを真下に向けて1コマ撮影します。それはお客様には決して納品されることない捨てカットですが、どのくらいの範囲がそこに写っているかは特に今まで意識していないにしろおおよそ頭に入っており、今回の案件では充分な面積が写ると判断しました。
また自走式クレーンではブームと呼ばれる主軸と延長アームというべきジブの接点を軸に「くの字」型に角度が変えられるので、画面にクレーンが入ることなく真俯瞰撮影が可能です。
(2)のポジ撮影に関してはデジタルとの二刀流を掲げるクレーンカムとしては何の問題もありません。
その他、正午付近の真俯瞰撮影ではクレーンやカメラの影がヘリに落ちる可能性があるため早朝か夕方近くがよいこと、朝や夕方でも設置する方向によっては影が落ちること、クレーン設置に必要な地盤の堅さ・面積などについてお話しし、電話を置きました。
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■今回のライバルは模型!
見積提出後、ロケ地の候補が千葉県にある大学病院から東京へリポートにかわり、さらにはそこでの撮影もできない場合は模型を撮影する案(!)が出るなど、進展のないまま1ヶ月近くが経過しました。
模型撮影にならぬことを願う日々です。
その間にも安藤氏とは頻繁に連絡を取り合い、ヘリコプターの正確なサイズを教えていただきました。ハッセルブラッドで想定される40/50/80mm各レンズを使用した場合、被写体(ヘリ)上空からどのくらい距離を取らなければならないかをそれぞれのレンズの画角を元に計算。その結果、
40mmレンズで高さ14.5m(ローター面から)
50mmレンズで高さ16.5m(同上)
80mmレンズで高さ24.5m(同上)
という結論を得ました。
また安藤氏よりクライアントはフジテレビ、ドラマはドクターヘリをテーマとした「コード・ブルー」というタイトルで7月3日より毎週木曜日夜10時放映であることなども教えていただきました。
そうこうするうちロケ地が千葉県の大学病院に決定との連絡。ただし病院側からの条件として、
・クレーンの設置はヘリポートの敷地外に限る
・救急要請による緊急離陸の際はただちに撮影中断、2分以内に待避のこと
問題はクレーンとヘリがどれくらい離れなければならないかということです。クレーンメーカーが公表している作業半径・揚程図によりある程度のことは予想できますが、もし現地へ行ってみてその距離が40〜50mとなれば撮影が不可能になります。高さが必要な80mmレンズはヘリとの距離を縮めるので断念、50mmレンズ使用を前提としました。
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クレーンカムはクレーンを動かすプロではありません。クリアランスの距離を算出するにあたり、静岡市のクレーン会社『上坂』に協力を要請。高さ20m(カメラからローター面まで16.5mプラス地面からローターまで3.5m)を保持しつつ、絶対安全が条件でクレーンの能力一杯にブームを伸ばしたときどのくらい離れられるかを算出してもらいました。その結果25トンクレーンで30.5m、50トンクレーンで33.5mとわかりました。クレーンのブームを上方に伸ばす場合、50トンの方が25トンより約10m高く伸びますが、逆に水平方向に倒す場合ブームの自重が重いためあまり伸ばせないとのこと。また緊急待避の旋回も軽い25トンの方が機敏であり、30秒あまりで反対側を向けるとのこと(提出資料には念のため40秒と記載)。以上の結果をまとめPDFで安藤氏に送付。あとはロケハンでヘリポートの面積次第、ということになりました。 |
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■ロケハンで意気消沈
5月21日。番組本編撮影も行われる千葉県内の大学病院にて安藤氏をはじめスタッフコミュニケィションの3名の方、フジテレビ広告宣伝部のご担当者様と初顔合わせ。昼食をとりながら段取りなどの打合せ。その後ヘリポートへ。
初めて目にするドクターヘリはメインローターが5枚ブレード、テールローターのないノータータイプで、普段空撮のために搭乗するヘリコプターとは明らかに違っていました。白を基調とした堂々たるボディは「人命を預かる」という使命のせいか圧倒的な存在感を放ち、思わず「でかい!」と唸ってしまいました。
病院のドクターヘリご担当者、運行する朝日航洋さんを待つ間「ヘリっていくらするんだろ?」「億はしないんじゃない」など皆さんもやや興奮気味。
肝心のヘリから敷地外までの距離は目測でおよそ20m、何とかいける範囲だと判断。その後朝日航洋さんとクレーン設置場所の交渉をし、機長には本番では現在駐機してある場所からあと2mでも3mでもいいからクレーン寄りに置いてもらえるようにお願い。「ちょっとそのお願いはマズイだろ」という空気もありましたが、ヘリが近ければ近いほどクレーン作業は安全になります。機長も了解していただきました。
安藤氏と朝日航洋さんとの会話。「ちなみにこのヘリはおいくらですか?」「10億です。」それを境にロケハンの雰囲気は一変。院内のカフェテリアに戻ったときには誰もが口数も少なく、どよよんとした重たい空気。「万が一の事故の時は機体の弁償だけでなく、飛べなくなれば患者さんの命が・・・」「ブレードだけで5千万だって」「一度事故を起こした機体は修理後も数ヶ月運行ができないらしい」出てくる会話はどれもマイナスモード。皆さん大人ですから顔には出しませんが『ホントに大丈夫なんだよね?』と全員がこちらを見ている様な気配が・・・。
普通に考えたら今回の姿勢・荷重でクレーンが倒れる、カメラが落下するなどの可能性は限りなくゼロに近いのですが、その瞬間大地震が起きるかも知れないし・・・。
考えてもキリがないということでクレーン会社へ損害保険の増額要請、撮影装置のさらなる安全対策を約束して解散となりました。 |
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■いざ本番
5月26日午前6時。ホテルの窓から見ると外は深い霧。雨以外は撮影可能といった手前、感度400のフィルムも用意したものの、ちょっとため息。
午前7時30分、ヘリポートに全員集合。その頃には霧は晴れて青空が広がる。
午前7時50分、クレーン到着。オペレーターに概要を説明し、セッティング開始。フィルムは感度100のRDPを選択。
午前8時30分、撮影装置をクレーンに取り付けセッティング完了。安全対策としてカメラの落下防止ワイヤーを撮影装置に取り付ける。そのままヘリの上空へといきたいところですが、念を入れもうひと作業。ヘリのない別方向にブームを振り、あらかじめレーザー距離計で測っておいたクレーン〜ヘリ間と同距離までブームを伸ばします。地面にはヘリと同寸の目印を置き、確実に画面に収まることを確認。
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午前8時45分、クレーンのブームをゆっくり旋回し、ヘリの真上へ。モニターで見ながらヘリのブレード角度を微調整。いざ撮影開始!のはずが、気がつくと薄曇り。その後雲は増え続け完全な曇り状態。しばらく待ったものの晴れる気配はなし。ディレクターによればキリヌキなのでかえって影がない方が好ましいとのこと。急遽カメラを降ろし曇り用の露出に変更。ただし白のヌケがいいよう1/3増感現像を前提に露出調整。ようやく撮影開始となったものの数コマ撮ると今度は陽差しが!
フィルムを入れ替え再び晴れ露出で仕切り直すか、そのまま雲待ちにするか判断を迫られましたが、写真屋としての経験上雲待ちを選択。5分、10分、雲はあるものの太陽を遮るまでには至りません。やはり選択を間違えたかも・・・。その間にもヘリ上空のカメラは位置を変えることなく静止し続けています。これもクレーンカムの特徴のひとつ。必要であれば何時間でもその場にカメラを静止させられます。しかしそんな呑気なことをいっている場合ではありません。緊急出動要請が入ればヘリはたちまちいなくなり、雲待ちどころの話ではなくなります。
やがて雲が広がりはじめ撮影再開。
指定されたアングルは真俯瞰と、やや斜俯瞰の2パターン。それぞれにブレードの角度が2パターンあり合計4カット。それをフィルム1ロールで撮りきり、フィルムを入れ替えもう1度同じことを繰り返します。1本をテスト現像、もう1本はその結果を踏まえての本番現像用のフィルムとなります。
時折晴れ間が出て撮影中断があったものの、午前9時半にはヘリを撮影終了。
撤収作業に入ろうとクレーンを左旋回してもらうとモニターには隣にある本来のヘリポート(今回は臨時で鉄板の上)が映し出されました。それはドラマ用にカッコ良くペイントしなおされたぴかぴかのヘリポート。離着陸経路から外れた上空20〜30mからのアングルは今をおいて他には撮れないと思い、その場で撮影を提案。1ロール6アングルをおさえ、午前10時に事故もなく出動もなく無事終了となりました。 |
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■撮影を終えて
天候待ちを除けばヘリそのものの実質的な撮影時間は30分そこそこ。技術的にも難しい撮影ではありません。しかし今回最大の難関は「万が一」というプレッシャーでした。
30分間の本番撮影に至るまでに膨大な時間を費やし、打合せ、計算、シミュレーション、ロケハン、交渉、安全対策と、やれることはすべてやったという自信から、本番当日朝には「何も問題はない」という気持ちで撮影に臨むことができました。今思えばこの時点で撮影の成否は9割方決まっていたと思います。
もちろんフジテレビ広告宣伝部の皆様、スタッフコミュニケィション、朝日航洋、ロケ地となった大学病院の皆々様のご協力の上に成り立っていることは言うまでもありません。 |
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■安藤聡氏プロフィール
72年東京都生まれ
95年(株)スタッフコミュニケイション入社
08年7月(株)signalに、account managerとして参加 |
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■お断り |
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今回の完成ポスターは役者さんの顔写真を使っているため、本サイトに掲載できませんでした。6月下旬より都内各所に張り出されるとのことです。
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本サイトにおけるフジテレビの名称及びドラマタイトル「コード・ブルー」の使用は、フジテレビ広告宣伝部様より了解をいただいております。 |
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■追記 2008/09/06
クレーンカムで今回撮影したドクターヘリ画像は番組ポスターの他、9月3日発売のオリジナルサウンドトラックCDのレーベル面、9月6日発売の番組ノベライズ本「コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」のカバーにも使用されました。 |
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========ケーススタディ======== |
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